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神紋
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今日は神紋について、少し考えてみる。

 各家庭に「家紋」があるように、神社にもそれぞれ固有の紋、神紋がある。祭などで引き出される神社の神輿に金色に輝く神紋は、神社のシンボルとして人々に親しまれている。
「神紋」はどのように決められているんだろう。幾つかの神社のパターンを見てみよう。

・皇室との関係・菊の御紋
祭神が「○○天皇」であるとか「□□皇子」である場合、つまり皇室と直系である場合は、 菊の御紋を使用する。また、神話などに登場し天皇家の祖と考えられた祭神を祀る場合も同様。 その意味で応神天皇を祀る八幡宮も菊の御紋を使用する場合がある。 ただ、八幡の神紋は三つ巴と考えられているように、他の紋が使用される場合もあるので、なかなか説明は難しい。 ようするに、「皇室直系」は、菊の御紋を使用する「権利」がある、ということ。
おなじ菊の御紋でも、その花弁の数や、八重などの違いは、直系度による差を表現しているのだろうか。

皇室と直接の関係がない祭神であっても、官幣社などでは、菊の御紋を使用する場合がある。 明治二年、太政官布告によって伊勢・宇佐・上下賀茂以外の神社での菊紋の使用が禁止され、 さらに明治四年には全ての神社での使用が禁止されたが、 その後、明治十二年に政令があり、官幣社では菊紋を使用してもよいことになった。 この場合、菊を少しアレンジしているのが面白い。たとえば、菊に水の流れをあしらった菊水、 菊を幾つかの分割した割菊、菊に一文字を加えた菊に一文字、 菊に本来の神紋を加えるなど。なかなか面白く美しい意匠だ。
十六八重菊 菊水 四つ割菊 半菊に一の字
・伝承や神徳を表現
八幡宮の三つ巴に関して、その由来には諸説あるが、その中の一つに、弓矢の鞆の形から来ている、 というのがある。八幡神は頼朝の信仰が厚く、武芸の神・弓の神として祀られたという。 つまり、「三つ巴」は武芸のシンボルである。このように、祭神の神徳を由来とする神紋がある。
同じ「三つ巴」を使用している貴船神社の場合は、祭神が水を司る神ということから、 水の紋として「三つ巴」を使用しているようだ。
また、天日矛の末裔で、垂仁天皇の命によって、「非時の香菓=橘」を常世国から持ちかえった、 多遅摩毛理を祭神とする神社は、その橘紋を使用している。
出雲の日御碕神社では、素盞鳴尊が柏の葉を投げた故事から、柏紋を使用している。
このように、祭神にまつわる伝承や神徳のシンボルとして神紋を使用している場合もある。
左三つ巴 丸に橘 三つ柏
・パトロンの家紋
対馬の神社巡りをしていると、多くの神社でを神紋として使用していることに気づく。 は対馬を統括支配していた宗氏の家紋なのだ。
このように、神社の再建・修築等に多大な助力を行ったパトロンの家紋を神紋としている神社も多い。 鹿児島の神社には、島津氏の紋、丸に十文字を使用しているものが多い。 姫路の射楯兵主神社では、三つ巴と丸に二引きだが、これは赤松氏の紋。 祇園八坂神社では織田氏の木瓜(五瓜に唐花)を用いているのは有名だ。
逆に、崇敬する神社、あるいは関連のある神社の神紋から、家紋を採用する場合もある。 有名な所では、三河の松平(徳川)氏・本多氏らは加茂神社との関係から葵の紋を家紋とし、 徳川時代の有名な「葵の御紋」が誕生した。 この場合も少しアレンジが加わり、加茂神社の葵は双葉葵だが、 徳川氏では三葉葵、本多氏は立葵を使用している。
五七の桐 丸に十文字 丸に二つ引
五瓜に唐花 加茂葵 右離れ立葵
・社紋
神紋は、基本的には祭神毎に決定しており、神社毎ではない。 通常の神社では祭神は一柱あるいは、一組なので、その祭神の神紋を神社の紋としている。 多くの祭神がいる場合では、主祭神の神紋を使用する。ここで同列に複数の祭神をお祀りしている場合では、 神社の紋はどうすればよいのだろう。
その一つの解答として、出雲の美保神社の紋が面白い。 美保神社では、三穂津姫命と事代主神を祭神としているが、三穂津姫命の神紋は二重亀甲に渦雲、 事代主神の神紋は二重亀甲に三巴となっている。そして美保神社の紋は、二重亀甲に三の字である。 美保の字は昔、三保(三穂?)と書いたことに由来する。これを「社紋」という。 つまり、祭神によらない神社の紋ということ。通常、神社の神紋と呼んでいるものは本当は、 神社の祭神の神紋で、神社の紋としても使用しているだけだ。ちょっと表現がややこしいが。
このように、祭神に依存しない紋を使用している神社もかなり多くある。丸や亀甲の中に、 神社名の一字を入れた紋(熊野大社の亀甲に大、美談神社の丸に美など、出雲に多い)を用いる事が多い。
金毘羅の丸に金は、社紋か神紋か判断に苦しむところだが。
二重亀甲に巴 二重亀甲に渦雲 二重亀甲に三の字
亀甲に大の字 丸に美文字 丸に金文字

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【 神紋:玄松子の雑記帳(印刷用ページ) 】

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